お米の炊飯には氷を加える?

この記事は約 4 分で読めます。

こんにちは、めしラボです。

お米を炊くために氷が用いられることがあります。たとえば「お米を水に浸しておく際に氷を加える」「お米を炊飯する際に氷を加える」などです。一見して無駄なように思えるテクニックですが、ご飯の味や保存性に影響を与える可能性があります。

特に鍋炊飯にはおすすめのテクニックです。

めしラボめしラボ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 炊飯に氷が用いられる理由は?
  • お米の吸水に氷が用いられる理由は?
  • 氷を用いることで美味しくなる仕組みは?

お米を炊くということはデンプンを糊化させることです。

お米はデンプンが糊化(α化)することによりご飯として食べられるようになります。お米のデンプンを糊化させるためには十分に吸水させたうえで熱を加えていく必要がありますので、吸水方法と加熱方法がご飯の炊きあがりに影響します。

炊飯に氷を用いることでご飯の味が良くなる可能性があります。

スポンサーリンク

お米に水を吸わせる際の注意点は?

お米は吸水後に炊飯します。

お米は水分率15%程度まで乾燥されていますので、吸水させてから炊飯しなければ芯の残る美味しくないご飯(にわか炊きご飯)になってしまいます。そのため多くのレシピ本などでは「洗った米を少なくとも30分、できれば2時間以上水に浸けておく」と指示されています。

これにより炊飯可能な吸水量になります。

  • お米(うるち米)の飽和吸水量は米重量の20~25%
  • 5℃での60分後吸水量は20%弱
  • 16℃での60分後吸水量は20%強
  • 30℃での30分後吸水量は20%弱

いずれの温度帯でも2時間ほどで飽和吸水量に近づきます。

そのため吸水に関しては「2時間以上水に浸けておく」ことが理想となります。しかし常温で長時間吸水させることには雑菌のリスクやそれに伴う風味の変化のリスクが生じますので、氷や冷蔵庫を利用することで対処することになります。

また一部の研究では「低温浸漬が飽和吸水率を上昇させる」という意見もあります。

お米の吸水率がご飯を美味しくする?

お米が十分に吸水されていると美味しく炊けます。

デンプンの糊化(α化)には水分が不可欠ですので、吸水が不十分な状態で加熱を始めてしまうとデンプンの糊化にムラができてしまいます。米粒に芯の残るご飯(にわか炊きご飯)に炊き上がってしまうために美味しくありません。

そのため(特に鍋炊飯では)吸水状態が重視されます。

ちなみに粒感のあるご飯とにわか炊きご飯には明確な違いがあります。たとえば塩麹やハチミツを加えて炊かれたご飯はデンプンが酵素により分解されているために粘りの少ないパラパラとした炊き上がりになりますし、にがり(塩化マグネシウム)を加えて炊くと細胞膜(ペクチン)が保持されるために粒感のある炊き上がりになります。

にわか炊きご飯は炊飯における典型的な失敗ですので注意が必要です。

米ぬかは水を変質させやすい?

浸漬時間が長すぎると水が変質してしまうことがあります。

これは米ぬかには微生物(乳酸菌や酵母など)のエサとなる養分が豊富であるためであり、これらの微生物の生成する成分によってご飯の風味が変化してしまうことがあります。そのため浸漬は低温で行うことや炊飯前に水を換えることもあります。

またざる上げをして「洗い米(吸水と水切を同時に行われたお米)」にすることもあります。

氷を入れて炊飯するメリットは?

炊飯時の氷は酵素の働きに良い影響を与えます。

炊飯時の温度管理には「温度上昇期→沸騰期→蒸し煮期→蒸らし」がありますが、氷を入れて炊飯することにより温度上昇気が長引くことになります。それによって米粒内の酵素が反応しやすくなり、デンプンが分解されて甘味が強くなります。

酵素により増加した低分子の糖には「デンプンの老化(β化)を妨げる」という働きがあります。デンプンの老化(デンプン分子の再配列)が起こりにくいということは「冷めても美味しいご飯になる」ということです。

お弁当や冷凍保存用のご飯には押さえておきたいポイントであるといえます。

たとえば…

炊飯時の水加減の基本は「お米の1.5倍重量」です。たとえば2合(約300g)を炊飯する際の水加減は450gとなります。氷を加える場合には氷の分の水分は差し引くようにして調節します。

まとめ・お米の炊飯には氷を加える?

炊飯時には氷を用いることがあります。

たとえばお米の浸漬時(吸水時)には水の変質を防ぐために氷を加えて温度を下げることがありますし、炊飯時には温度上昇気を長引かせて酵素を働かせるために氷を加えることがあります。どちらも意味のあることです。

しかし炊飯器を使用する場合にはセンサーを狂わせて逆効果になる可能性もありますので注意が必要です。